PLAY-DECO [プレイデコ] デザインヒストリー

DESIGN HISTORY
PLAY-DECOの誕生秘話と、そこに込められた思いをご紹介します。

文:ツノダ タカシ(デザイナー)

原点にかえる

2011年3月11日、未曾有の規模の地震が日本を襲いました。多くの方が亡くなり、町が破壊されました。私たちが「普通」だと思っていたことは、これほどもろいものだったのか。幸い私は大きな被害を受けなかったのですが、強烈に意識の変化がありました。

エネルギー問題、資源の問題。もともと不況であった日本に、更なる問題が襲いかかり、それはいつ収まるともしれません。

そんな中で、デザイナーはこれから何を作るべきか。震災から1ヶ月間は、何も手がつかず、考えてばかりいました。

形を作りだす。当たり前にデザイナーがやるべきことと思っていたことは、本当にやるべきことなのか?それよりもできることがあるのではないか?

そうして考えに考えた結果、1つの結論に至りました。
「それでも、人類の歴史は続いていく」

歩みを止めることは許されない。悲しいけれど、苦しいけれど、僕らは前に進まなければいけない。未来を創ることを、止めてはいけない。


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そもそも自分がやろうとしていたことは、人にとって良い影響があるものを作り出す事です。

良い影響とはつまり、その人の心持ちを、前よりちょっとだけクリエイティブにするということ。

クリエイティブな心持というのは、何かを作るということに限りません。例えば落ちているゴミを拾ったら、次の人が気持ちよく使えるね、とか。そういう小さな気持ち、ちょっとだけ先のことを考えて、創造的に行動するということだと思うんです。

そういう、小さな小さなクリエイティブが連鎖していくことで、未来はより良いものになっていく。その小さな気持ちの種「クリエイティブなことって楽しいね」を、手を使って楽しむ物品で作れたらと、ずっと考えながらモノを作ってきました。

大変な災害に、手も止まってしまって、考えも突き当たってしまって・・でも歴史はこれからも止まらない。未来は今この瞬間も作られていっている。

だったら。だったら!
悩んでいる時間なんて無い!

僕がやってきたこと=「未来にとって質の良い種をまくことを」、もっと速く、もっと広く、世の中に提供していくことこそ、僕がやるべきことなんじゃねえのか!?

当たり前のところに戻ってきたようにもみえますが、本当に、目の覚める思いだったんです。そして、「工作」に立ち返り、これからは全力をそこに傾けると決心したのでした。

何を作るか

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4月。最初は何も決まっていません。
なんとなく厚紙をいじりながら、成り行きのままにモノを生み出していく時期が続きます。

上の写真の真ん中上のやつなんて、今見るとやる気あんのかという感じですが、もちろんいたって真剣です。

決めていたことの1つは、紙でいくということ。震災後のエネルギー問題、資源の問題を鑑みると、どうしてもプラスチック、鉄などの「自然でないもの」には手をだせなかったんです。

それからもう1つ決めていたのは、「可動する」ものを作ること。やはり、作って終わってしまうのではなく、作ったあとも楽しめることは、ずっと大事にしてるテーマだからです。

作り終えるまでは、デザイナーの意図の範疇。でも紙工作の良さは、ユーザーがデザイナーの意図を超えていけることだと思うんですよね。

どうやって飾ろう、どんなポーズにしてやろう?と考えるのももちろんなんですが、紙ですから、落書きするでも良いじゃないですか。シール貼ってデコレーションするも良し、なんだったら、自分でも作り出せちゃう。そんなプロダクトって、他にあるでしょうか?

ともかく、紙ってすごく想像力をかき立てる素材なんですよ?と、僕はとっても思っているわけです。

そんな中、スリットを十字に組み合わせたものと丸い穴との組合わせで、可動する箇所を作れることに気づきました。

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人形はできた、が・・

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この仕組みを使って早速人形を作ってみることに。紙(試作はスチレンボードですが)で出来てるし、手足も動きます。

おおー結構かわいいし、これはイケて・・いや、イケてないな。
なんでしょうこの「突き抜けるものがない」感じは・・

ボーンとスキン

不安を抱えつつ、さらにいろいろ作って行くうちに、これらは骨組み(ボーン)と、皮(スキン)に分離できることが分かってきました。

紙工作の難点は、その弱さにあるのですが、

・骨組みを丈夫な紙で作る
・外側を従来通り紙で作る

ということができれば、強さと柔軟さを兼ね備えたものになるのかもしれません。

あれれ?これ革命的な考えなんじゃないですか?

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乗り物

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それでもやはり人形だけでは、今までのプロダクトと同じ。種類が増えただけで、僕としてはまだまだ面白みを感じることができません。

固くて厚みのあるもので・・皮と組み合わせて・・・ああ、そうか!乗り物だ!

幸い、僕が今まで作って来たプロダクトは、だいだい同じようなスケールで出来ています。乗り物をつくれば、そもそも新しい展開だし、乗り物に今までのプロダクトを乗せることだって可能です。

早速試作にとりかかり、手応えを得ました。

難問

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ある程度形になってきたところで、思わぬ問題に引っかかりました。

今までは段ボールやスチレンボードで手作りで作っていたんですが、そんなに複雑な形状じゃないし、「きっと型抜きでいけるだろう」と、本番の生産については甘く見ていました。というかすみません、自分のアイデアに酔ってました。

もちろん、スキンの部分は印刷だけなので可能なのですが、問題はボーンの部分ですよ。

厚紙を型抜きするだけ、と簡単に考えていたんですが、現実はそんなに甘くありませんでした。

本当に、今考えれば恥ずかしいくらい甘く考えていて、その厚紙も特にちゃんと考えていたわけではなく、要するに灰色のいわゆる感じのやつの?分厚いやつを?ほら、抜いて?・・てくらいしか考えていませんでした。

工作=紙ってことで、そもそも全部紙でやろうと考えていたんです。震災で被災した、そこでしか作る事ができない部品を作る工場が稼働しないために、全体的に生産が止まってしまって・・なんてことがありましたが、ありふれた素材でシンプルな作りかたをすることで、供給を止めないこと(これって、メーカーにとってはとっても大切なことなんです)ができますし、なんなら世界中のどこででも作ることができます。

しかし、紙加工やさんに聞いてみたところ、意外なほど渋い返事。…あれえ???
「3mmの厚紙に3mmのスリットを(高い精度で)入れる」ということが思いのほか難しいようです。

いや、僕が要求している精度と値段ももちろん関係あるんですけどね…

ともかく、厚紙で作るのは固すぎて無理。では厚紙ではなく、段ボールだったらどうか、というと、今度は密度が足らなくて、細かい部品が作れない。

そこで紙加工屋さんと相談して、「1mmの薄い段ボールを3枚重ねて3mmにする」という方法で試してみることに。

ただ、「1mmのものを張り合わせて3mmにしたもの」というのは固いので、そのままではレーザー抜きでも型抜きでもちょっと無理。

うーん、じゃあ待て、抜いてから張り合わせたらどう・・?おおっ!?

なんて、裏技的なアイデアを紙加工やさんと練りながら、どんどん特殊製法のほうに突っ込んでいきます。ありふれた素材で作ることの良さとか言ってたのは誰でしたっけ。

それにしても、ボーンは今回のキモなので、これが出来ないと、全て頓挫することになります。あれだけさんざん、革命的なアイデアだの何だの言ってた自分が、急に恥ずかしくなってきました。

そして…見事に頓挫しました。

いろいろな方法を試した結果、「紙でボーンを作るのは無理」という判断が下されてしまったのです。

意外な突破口

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ほうぼうに聞いて回るんですが、やっぱり紙で僕が思ったようなパーツを作るのは難しいとのこと。

もう半分ヤケです。

紙で出来ないんだったら、なんや、いっそのこと木で作ったろか!

…ん?…あれ?それ…!

即座に電話をひっつかんで、以前積み木を作っていただいた木工会社に連絡すると「出来ますよ」とあっさり

うわー!そうだったのか。
当たり前に出来るところは、当たり前に出来ちゃうんだなあ・・

そもそも何故ずっと紙にこだわって来たかというと、そう決めたからというか、やはりそれが得意で、一番僕の力を発揮出来るところだから、というのが理由です。ていうか、よく考えたらそれだけです。

そこにこだわり続けるうちに、何か見失ってたというか、柔軟じゃなくなってた自分を反省。

ともかく、ボーンは木で。そしてスキンは紙で。その時の僕にとっては、とっても意外な突破口からぎゅんぎゅんと話は進み、世にも珍しい(珍しいですよね?)「木と紙の工作」が生まれることになったのです。

たぶん、紙の工作だけを考えていても、木の工作だけを考えていても生まれることのない、コロンブスの卵的な発想、というか偶然辿り着いた無人島的なもの。そこに、いろいろな寄り道をしたあげくにたどり着くことができました。(勢い余って特許も申請)

「ありふれた素材」「ありふれた手法」で、世の中に無いものが生まれつつあります。これって、実はすごいことなんじゃないかしら?

木と紙の融合

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そもそも紙で作ろうと思っていたので、ボーンとスキンの質感の違いはそれほど気にしてなかったんですが、いくら自然の素材同士とはいえ、異素材同士うまく融合するのかしら?とさすがに気になります。

でも、試作1発できれいに不安は解消しました。合う合う。というかむしろ、高め合って良くなる方向です。紙工作では決して醸し出せない「質感」を、木がビンビン発していて、それに紙(とその印刷)が彩りをそえるという格好。

で、その木と紙の融合部分なんですが、ノリで貼付けますなんて言っちゃうと最高に面白くないので、ボーンに出たポッチと、スキンにあいた穴で止めることにしました。これがまた良い感じ。

ノリを使わずにしっかり止まるし、スキンの着脱も簡単。

つまり、ですよ。

しっかりしたボーンはそのままに、紙の部分(スキン)をつぎつぎ付け替えて遊ぶ、という遊びを提供出来ると気づいたんです。

目的物をつくるのも工作なんですが、僕は常々「その先」が欲しいと思っていて、ようやく1つの答えに辿り着いた感じです。

スキンはただの厚紙なので、さらにウェブでダウンロードできるようにしたり、ブランクのものを作って、自分で絵を描いてもらったりすることも可能。

これだ!

こうして、PLAY-DECOのコンセプトががっちりと決まったのでした。

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